世界観からはじまる
―S-ORIJIN シリーズのプロダクトプロセス―
私にとって、ジュエリーは“装飾”ではない。
それは、S-ORIJINというプロダクトの思想や世界観を「かたち」にするための手段。
もっと言えば、伝えるための“媒体”のようなものだと思っている。
だから私は、いつもコンセプトから先に考える。
先に決まっていたのは、「どんな世界を描くか」
ということ。
形ではなく、思想や空気感。
たとえば──
「小さな違和感が、大きな変化を生む」
「自分の“起源”をたどるような感覚」
「誰の声でもない、自分の声を聴く」
そんな世界観をまず丁寧に描いて、
そこにふさわしい“言葉”を探していく。
このシリーズの名前「S-ORIJIN」も、
コンセプトの延長線上に生まれたものだった。
ネーミングが先にある。
言葉の響き、意味。
それがジュエリーの輪郭をつくっていく。
たとえば、「オリジン-ORIJIN」という語には、
“始まり”と“まだ未完成のもの”というふたつの意味を重ねている。
そこからようやく、デザインの作業に入る。
頭の中にあるのは、金属の光沢やサイズ感ではなく、
そのジュエリーを身につけたときに「どんな気持ちになるか」。
私は、形をつくる前に感情を想像している。
だから、ジュエリーデザインというより、
むしろ“体験設計”に近いのかもしれない。
S-ORIJINのプロダクトは、こうしてできている。
最初に思想、言葉があって、要は「オリジン-ORIJIN」があって、
最後に「かたち」が現れる。
逆算ではなく、逆流のようなプロセス。
でもきっと、それが私にとっていちばん正直な
“ジュエリーデザイン”なのだと思う。
Designer SHU